私たちの生活に欠かせない火を司る神様、それがカグツチです。
人間の暮らしを守るありがたい神様ですが、粗末に扱って穢すようなことをすると、怒って全てを焼き尽くしてしまう、恐ろしい神様でもあります。
どんな神様?
カグツチはイザナギとイザナミという、日本で初めて夫婦になった神様から生まれた子です。
天の神々から日本の国土をつくるように命じられたイザナギとイザナミは、結婚して日本列島を生み出しました。そして自然界に必要な、風の神、海の神、野の神、川の神など、たくさんの神を生みます。
そんな中、最後に生まれたのが火の神、カグツチです。
カグツチは「迦具土神」と書きます。「カグ」はかぐや姫の「かぐ」と同じで、揺れて輝くという意味で、「チ」は神の力のこと。
つまりカグツチの名前は「ゆらゆら揺れて輝く神=火」を表しています。
ですがカグツチが火の神だったために、イザナミは陰部にやけどを負って、それが元で死んでしまいました。
妻のイザナミを亡くしたイザナギは、嘆き悲しみました。そしてあろうことか、悲しみのあまり、妻の死の原因をつくったカグツチを剣で切り殺してしまったのが神話の中のエピソード。
このときカグツチの血が岩にほとばしり、岩石の神、火の神、雷神、雨の神、水の神、剣の神など、多くの神様が生まれました。
火伏せ・商売繁盛・出世の神様
悲しい出生を背負ったカグツチですが、やがて火事を防いでくれる神として信仰されるようになります。
カグツチが降り立ったとされるのが、静岡県浜松市にある「秋葉山本宮秋葉神社」です。全国の秋葉神社の総本宮で、江戸時代には「秋葉大権現」と呼ばれ、ここから秋葉信仰が各地に広まりました。
秋葉神社では空気が乾燥して火事が発生しやすい12月に、毎年「防火祭」が開催されます。
カグツチは京都にも鎮座しています。
愛宕山の山頂にある「愛宕神社」は、古くから修験道場の霊山として栄え、ここで修業した人々が愛宕信仰を広めていきました。
やがてカグツチは火伏せ・防火の神様として、各地で広く信仰されるようになりました。
また経済状況が苦しいことを「火の車」といいますが、その火をコントロールする神様なので、火の車を抑える、商売繁盛の神様としても祀られることがあります。
更には現在の東京都港区にある愛宕神社には、通称「出世の階段」といわれる急勾配の男坂があり、ここにはあるエピソードが残っています。
徳川家光の時代にこの階段を馬で駆け上り、家光から褒められた武士「曲垣平九郎盛澄」が、石段を登ったことで異例の出世をしたことから、出世・勝運の神様としても信仰されるようになりました。
カグツチのご利益は?
- 防火・防災守護
- 土地の守護
- 鉱業守護
- 商売繁盛
- 出世開運
- 恋愛成就・良縁祈願
カグツチの別称
- 迦具土神(かぐつちのかみ)
- 軻遇土神(かぐつちのかみ)
- 火之夜藝速男神(ひのやぎはやをのかみ)
- 火之炫毘古神(ひのかがびこのかみ)
- 火之迦具土神(ひのかぐつちのかみ)
- 軻遇突智(かぐつち)
- 火産霊(ほむすび)
カグツチから生まれた日本の神様
カグツチの体から出た血や死体からは、数多くの神様が誕生しています。これは、火山の噴火をイメージしたものといわれています。
- 石折神(いはさくのかみ)
- 根折神(ねさくのかみ)
- 石筒之男神(いはつつのをかみ)
- 闇淤加美神(くらおかみのかみ)
- 闇御津羽神(くらみつはのかみ)
- 闇淤加美神(くらおかみのかみ)
- 闇御津羽神(くらみつはのかみ)
- 正鹿山津見神(まさかやまつみのかみ)/頭から誕生
- 淤縢山津見神(おどやまつみのか)/胸から誕生
- 奥山津見神(おくやまつみのかみ)/腹から誕生
- 闇山津見神(くらやまつみのかみ)/性器から誕生
- 志藝山津見神(しぎやまつみのかみ)/左手から誕生
- 羽山津見神(はやまつみのかみ)/右手から誕生
- 原山津見神(はらやまつみのかみ)/左足から誕生
- 戸山津見神(とやまつみのかみ)/右足から誕生