お正月とは、「年神様」を迎える行事のことです。
日本では正月が近づくと、年末に向けて大掃除をしたり、やり残したことを片付けたり、何かと身辺を整える習慣があります。
神社でも「煤(すす)払い」、「年越しの祓(はらえ)」などの行事が行われます。
こういった年末の習慣や行事は、正月の年神様を迎えるための準備です。
もくじ
正月飾りの意味とは?
昔から日本では、新しい年は「年神様」が運んでくるものだと考えられてきました。
年神様はそれぞれの家庭に、新しい年を運んできてくれる神様です。
そのため年末にかけて家に来てくれる、その年の年神様をおもてなしするための準備として「正月飾り」を飾る習慣があります。
ちなみに新しい1年をもたらす神様を「年神様」、あるいは「正月様」「年徳神」などとも呼び、その名前は地域によって様々です。
「年神様」と呼ばれる神様は、一説には穀物の神様ともいわれていますが、実はどんな神様なのかはっきりとはわかっていません。
お正月になると各家庭にやってきて、私たちの1年の無事や幸運を運んできてくれる神様ともいわれており、いわば福の神のような神様に近いのかもしれません。
門松(かどまつ)
平安時代の貴族たちが、不老長寿の象徴とされていた松の木を、正月初めの「子(ね)の日」に小さな松を根っこごと引き抜いて飾ったのが、「門松」の始まりとされています。
門松は年神様をお迎えするための目印として、玄関先に飾ります。
年神様を「祀る(まつる)」「待つ」に通じることから、松を飾るようになったといわれています。
注連縄(しめなわ)
正月飾りに「注連縄(しめなわ)」が用いられるのは、注連縄が神聖な場所を表しているため。
しめ飾りには「新しい藁(わら)」を用い、古い年の不浄を払う意味があります。
注連縄には一般的に、長寿を願う「裏白」、子孫繁栄を願う「ゆずり葉」、家系繁栄の「橙」などをあしらいます。
「門松」や「正月飾り」を飾るのは1月7日まで
ちなみに「門松」や「正月飾り」を飾っておく期間を、「松の内」といいます。
正月飾りを飾る期間は、一般的には1月7日までとされています。
(※「松の内」は地域によって期間に差があります。関東地方7日まで、関西地方15日までのことが多い。)
年神様へのお供え物
正月飾りの他にも年神様へのおもてなしには、「若水(わかみず)」「鏡餅(かがみもち)」「おせち料理」などをお供えします。
若水(わかみず)
「若水(わかみず)」というのは、元旦のその年の初めにくんだ水のこと。
昔から若水は、邪気を払う清めの力があるとされてきました。
井戸や川で水をくんでいた時代は、元旦の初めに水をくむことは「若水迎え」として、正月の大事な行事の一つでした。
その水を使って雑煮を作ったり、書初めの墨をするのが縁起が良いともいわれています。
現在はあまり馴染みのない「若水」ですが、もとは年神様にお供えするために、どの家庭でも行っていた正月行事の一つです。
元旦の初めに水道の蛇口をひねり、「若水」として神様にお供えしましょう。
おせち料理
お正月に食べる「おせち料理」は、神様に捧げる「お節供(おせっく)」です。
お節供とは、季節の節目ごとに神前に供える供物のことです。
一年の始まりである正月の料理は特別なものとして、「おせち」と呼ぶようになりました。
年神様のために用意した「おせち料理」を食べることは、神様と同じ料理を食べることになります。
つまりお節供をいただくことは、神様の力を分けていただくという意味があり、お正月にはおせちを食べるのが習慣となりました。
「おせち料理」の中身には、長寿や子孫繁栄をイメージさせるものや、縁起を担いだ食材が用いられています。
鏡餅(かがみもち)
「鏡餅(かがみもち)」もまた、年神様へのお供え物の一つです。
日本人の主食はお米です。日本人にとって、お米はとても大切なものですよね。
そのお米でつくった餅もまた、とても大切なものとして考えられてきました。
「鏡餅」の丸い形には意味があり、神様の依り代(よりしろ)となる、一説には鏡や魂をイメージしたともいわれています。
「鏡餅」の飾り方は、白木の三宝(さんぽう)に白い紙を敷き、裏白、大小の丸い餅、橙(だいだい)の順に重ねるのが基本です。
通常「鏡餅」は神棚に備えますが、神棚がない場合は、床の間や飾り棚で代用しましょう。
「鏡開き」は1月11日
年神様にお供えした鏡餅をいただく行事を、「鏡開き(あるいは鏡割り)」といいます。
「鏡開き」の日は各地方によって異なりますが、1月11日に行うのが一般的です。
「鏡開き」では、木づち等で鏡餅を割り、神前に供えた餅をお汁粉や雑煮にしていただきます。
ちなみに餅を木づちで割るのは、包丁で餅を切るのは縁起が悪いと考えられているためです。
昔は「餅を切る=切腹」とのイメージが強かったようで、神前に供えた物に対して「切る」「割る」という言葉や行為を避け、末広がりにつながる「開く」という言葉を用いました。
初詣(はつもうで)
その年の初めに神社にお参りすることを、「初詣(はつもうで)」といいます。
「初詣」の起源は、一家の主人が氏神様を祀ったお社(おやしろ)に大晦日から元旦にかけて籠り、神様と共に新年を迎える「年籠り」です。
大晦日の深夜から初詣に出かけるのは、「年籠り」の風習が現在に残っているためです。
初詣はまず、近所の氏神様からお参りしましょう。
氏神様とは、あなたが住んでいる地域に祀られている神様のことです。
普段からあなたの住む地域や、あなたの生活を守っているのが氏神様です。
もし氏神様がわからない場合は、近くの神社の社務所を訪ねて、どの地域を守っている神様なのか確認してください。
大きな願い事をするために初詣に行く場合は、氏神様と合わせて、日本人の総氏神様であるアマテラスを祀る神社にもお参りするのもいいかもしれません。
アマテラスは天皇家の祖先にあたる神様で、日本の神様の代表・最高神にあたる神様です。
アマテラスは太陽の神様でもあり、日々の暮らしに幸せをもたらす女神です。
1月1日に昇る「初日の出」を拝む習慣は、もともと「四方節(しほうせつ)」と呼ばれる、宮中行事が始まりとされています。
元旦の朝に身を清めた天皇が、アマテラスをはじめとする神々に豊作を祈願したことが、やがて元旦に昇る太陽を拝む風習に繋がりました。
1年の健康や幸運を願い、年の初めに神様にご挨拶にいってみてはいかがでしょうか。
お正月は1年の無事を祈る年中行事
お正月は、新しい年の健康や無事を神様に願う大切な行事に一つです。
毎年のように出かける初詣や、習慣として何となく飾るお正月飾りなど、それぞれ一つ一つに大切な意味があります。
新しい1年をもたらす神様をお迎えし、今年も良い年になるように、きちんと意味を知ってお正月の準備をしてみてはいかがでしょうか。