セオリツヒメは、神道の大祓詞(おおはらえのことば)に登場する神様です。
古事記・日本書紀には登場しない神で、色々と謎の多い女神として有名な神様。
ですが一方で水を司る女神として各地の神社に祀られ、災い事・罪・けがれを川から海へ流してくれる「祓いの神様」として信仰されています。
どんな神様?
セオリツヒメは古事記や日本書紀に登場しない神なので、どんな神様なのか、その存在は謎のままです。
ですが、不思議な事に神道(神社の教え)で重要な意味を持つ大祓詞に登場しており、それがまた謎を呼び、ちまたでは「封印された神」なんていわれたりしています。
謎の多い瀬織津姫の伝説
まことしやかに噂される「セオリツヒメの伝説」を簡単にまとめてみました。
諸説ありますが、どれも根拠のあるものではなく、あくまでも伝説としてのお話です。
1.実は弁財天のこと?
昔からよくいわれている説の一つに、「実は弁財天のことを指している」という説があります。
七福神の1人として知られ、日本でかなりメジャーな福の神・弁財天。
芸事や芸能の神様として信仰を集める弁財天ですが、実は海の彼方からやってきた水を司る女神様でもあります。
セオリツヒメも弁財天も美しい女神であること、水神であることなど相違点も多く、実はセオリツヒメと弁財天は同一神なのでは?とささやかれています。
2.朝廷に封印された女神?
セオリツヒメはとても謎の多い女神であるにも関わらず、何故か日本最高峰の神社・伊勢神宮に祀られています。
伊勢神宮・内宮の別宮「荒祭宮」に、天照大御神(アマテラス)の荒神として祀られているセオリツヒメ。(荒神は神々が持つ荒々しい側面、災いを起こす神のこと)
セオリツヒメは一説によると、アマテラスよりも前に信仰されていた古来の神様。
そのため、天皇の祖神であるアマテラスを頂点とする朝廷にとって、セオリツヒメがいると都合が悪いため、封印されたという説も。
また、もともとセオリツヒメを祭神に祀っていたはずの神社が、祭神をアマテラスに変えていたり、あるいは別の神様(あるいは別称)を祀るように変更していたりと、不思議なことも多いので、朝廷に消された悲劇の女神というイメージがついたようです。
3.アマテラスの奥さん説
実はアマテラスは女神ではなく男神で、その奥さんがセオリツヒメだった、なんて説もあります。
世界的にみても、太陽神を女神として祀るのは非常に珍しいこと。しかも男性主権の時代が長く続く日本で、最高神を女神として崇めるのは不自然では?とか、なんとか。
そのため元々は「男神だったのでは?」といわれています。
なんでも時の天皇である「持統天皇」は女性天皇。
朝廷は女性天皇の正当性を示すために、天皇家の祖先にあたる神・アマテラスを女神として描く必要があった、という疑惑がささやかれています。
もちろん男神を女神に無理やり変更するわけですから、色々と不都合も起こります。
ということで、奥さんであるセオリツヒメを歴史から封印する必要があった・・・。
ちなみニギハヤヒという神様が古事記や日本書紀に登場しますが、実はこの神様こそが本来の男神・アマテラスのことではないか?ともいわれています。
4.織姫と彦星のモデル?
もともと男神・アマテラス(アマテル)と、妻であるセオリツヒメは夫婦神として一緒の祀られていた、という伝説もあります。
というのも、古代・縄文時代にまでさかのぼると、神は夫婦神として祀られるのがポピュラーだったんだとか。
古来の日本でもともと広く信仰をあつめていた神が男神・アマテラスと、女神・セオリツヒメの2柱であり、のちにアマテラスの性別を変更したことで、以前から祀られていた2柱は歴史の闇に葬り去られることになった、という噂も。
平安時代から宮中行事で始まったとされる、七夕に登場する「織姫と彦星」の話は、実はセオリヒメがモデルとも言われています。
離れ離れになった2柱が、年に一度だけ再会できる七夕。
信憑性や根拠はなく、まことしやかにささやかれている伝説ですが、もし2柱がモデルだとすると、抹消され続けたセオリツヒメも少し浮かばれる気がしますね。
セオリツヒメのご利益は?
セオリツヒメは神道の神々をお参りする時に唱える、大祓詞に登場します。
大祓詞の内容では、セオリツヒメは祓戸大神(はらえどのおおかみ)として、私たちの罪やけがれを取り払ってくれる神として示されています。
セオリツヒメは、私たちから取り除いた罪やけがれを川から海へ流してくれる神様。
そのため、厄除け開運のご利益が得られるとされています。
セオリツヒメの別称
- 瀬織津姫命(せおりつひめのみこと)
- 瀬織津比売(せおりつびめ)
- 瀬織津毘売(せおりつびめ)
- 撞賢木厳之御魂天疎向津媛命(つきさかきいつのみたまあまさかるむかつひめ)
- 八十禍津日神(やそまがつひのかみ)
- 瀬織津姫穂乃子(せおりつひめほのこ)
- 向津姫(むかつひめ)
- 橋姫(はしひめ)
- 菊理姫(くくりひめ)